ステモモ雀鬼狂騒曲(鶴賀ドちょんぼ荘)


鳴島生『この腕売ります』(1973?)から(広告文は少し変えてあります)


麻雀マンガ研究者・V林田さんから大量のモモ同人誌を貰ったので鋭意消化中です。すべて全年齢向けというのが日本の明るい未来を感じさせます。あと年末にも某カリスマ麻雀ブロガー・いのけんさんから貰ったのですが、1冊とて被ってないのが素晴らしくも恐ろしいことです。
偉い人と友達であるくらいしかアピールポイントのない私ですが、ステルスモモと誕生日が同じです。運命です。
それではステルスにつき粗略にて失礼。Tumblrの方は適当に更新しておりますので、ぜひ。

青春牌の譜跡 1巻 (1985)

画・北野英明+作・四方城五郎 マンサンコミックス

  • 「別冊漫サン 傑作麻雀劇画」昭和59年5月号〜60年2月号掲載(1巻収録分)
  • 全2巻(2巻は未読)


作画の北野は言わずと知れた昭和麻雀マンガの大家。四方城五郎は麻雀マンガ雑誌の嚆矢『ギャンブルパンチ』(竹書房・1976〜81)の編集者・原作者、須賀五郎の別名。今は確か、名木宏之さんというお名前で麻雀博物館の文芸委員をされているはずです。
四方城五郎の原作は、麻雀プロを題材にしたものが多いのが特徴です。代表作は「ヒッカケハイスピードロックンロール」でお馴染み、『ロックの雀風(かぜ)』でいきましょう。



「せいしゅんぱいのふせき」と読むのでしょうか、なかなか秀逸なタイトルです。「青春牌」なる謎の単語と、こちらも聞きなれない「譜跡」という言葉の組み合わせ。色々考えても意味が分からないのですが、何となく「牌」が人で、道を歩んでいったり(歩跡)、将来を見据えて布石を打ったりするのかな、というイメージが湧きます。似たようなタイトルに『青春牌団』(桑沢篤夫+塚本JOY)というのがありますが、こちらは漢字4文字のせいか、「青春」と「牌団」の間に切れ目が意識されます。


|あらすじ

オールラスのトップでも、牌勢をテッペンまで追求した手役でアガるのがプロの雀士なのか? 競技麻雀に青春と麻雀人生を見いだそうと必死にもがく亀田洋介の若き瞳に映った雀卓の激闘は、果たしてなんなのだろうか!!

カバーの裏はこんな文章。前半部分は疑問符がつきますが、大筋は合ってます。



熱血硬派競技麻雀マンガ。
競技麻雀を目指す若者の話は沢山あって、片山まさゆきの諸作品や、最近完全版で復刊された『メジャー』(伊賀和洋+南波捲)が記憶に新しく、古いところでは『勝負星』(北野英明梶川良)、『プロ雀士修行』(松山三津夫)、『東大プロ雀士』(鳴島生+井出洋介)などが比較的入手しやすい作品です。
また大阪(関西)は麻雀が日本に伝わった頃から競技麻雀の伝統がある土地柄で、例えば「大阪・中之島中央公会堂は、昭和3年に日本で初めて麻雀大会が開かれた場所」だそうです。上に挙げた中では『勝負星』の主人公も関西出身です。
つまり「競技麻雀+関西」という組み合わせは意外とメジャーで、その分新鮮味が薄いと言えます。この作品も失礼ながら最初は「作画は北野英明だし*1、多分あんまり盛り上がらないんだろうな…」と思いながら読み進めていました。しかし豈図らんや、こんなにキャラクターが立った物語だったとは、と後で舌を巻くことになったのです。



最初に足を止めるきっかけになったのは、主人公のハプニングです。主人公は「俺は親の人形にはならない!!麻雀で自分の能力を試したい!!」高校生、亀田洋介。奨励会の先輩(社会人)の「金が絡まないと真剣に打てない」という発言に食ってかかるほどの青臭さ。

オジサン読者としては共感しづらく、どちらかというと後で登場するライバルの方がカッコいい感じなのですが、その彼がやってくれました。

分かりづらいですが、優勝すればアマチュア競技会の全国大会に出場できる予選会の決勝で、四暗刻をアガって小便を漏らす姿です。上に書いた「オシッコちびるくらい」は比喩ではないのです。これは衝撃的です。『咲-Saki-』はただ漏れそうにしているか、タコスが口でジョージョー言ってるだけですが、こちらは実際に主人公が勢いよくジョーと漏らしてます。しかも恐怖ではなくて興奮のあまり。こんなシーン見たことありません。
そして付いたあだ名が「ションベン小僧」。主人公のあだ名がションベン小僧…一気に次の展開が待ち遠しくなりました。
また彼を支えたり叱ったりする大人たちも熱いです。複雑なキャラクターではありませんが、脇役として十分な存在感を示します。


次に作品に引き込まれるようになったのは、主人公の最大のライバルとなるであろう流哲男の性格づけです。流は鉄火場出身で、師匠に言われて仕方なくアマチュア競技会に参加する人物として登場します。段位審査試験でも、ペーパーテストとマナーはからきしですが、麻雀の得点は最高です。

これだけなら麻雀マンガにはゴマンといるのですが、流が珍しいのは、「実は競技・博打に捉われず麻雀に情熱を傾けていて、主人公に共感する」点です。大体この手のライバルはイカサマ、脅迫といった卑劣な手段も厭わず、ダーティだけど強い、というのが定番なのですが、彼は素行は悪いが根っこは真面目です。競技麻雀のヌルい雰囲気が許せないからマナー悪く振舞うだけで、真剣に打ち込む主人公とは意気投合します。また彼は競技会から追放されるのですが、それは仲間の私怨からくるチクリによるもので、彼はあくまでも自分の信念を貫いたまま辞めていきます。

彼はその後、北海道の野澤白龍*2の道場へ遣られ、そこで麻雀修行することになります。
こういう複雑なキャラクターが1人いると、話がぐっと面白くなるようです。似たようなタイプに『ザ・ライブ』(神田たけ志)の三雲がいます。


こうして物語にズズイと引きこまれていくわけですが、この作品、麻雀の部分にも結構細かいこだわりがあります。下の画像のようなテストが作品中に出るのです。その辺りはまた次回に。

(この項続く)

*1:北野は超売れっ子で作品を量産しているので、傑作が少ない。あと現代からみると絵が地味。

*2:北海道には仲澤青龍というプロがいるので、名前を借りたものか?

おやすみなさい、ゴミ手ちゃん

断絶を知りてしまいしわたくしにもはやしゅったつは告げられている 岸上大作

年明けに岸上大作の著作がパブリック・ドメインになったという話題が流れていて、つまり没後50年が経過したということです。装甲車を足裏に踏むことすらほぼ不可能に近い中で、どうでもよかった青春を思い返す大人は昨日、仕事始めでした。
岸上で唯一面白いな、と思うのが上の歌です。ひらがなの「しゅったつ」が張り詰めていてカッコいい。
先日書いた賭け麻雀の件とか、去年の都条例の件とか、連帯について思うことが多くなりました。各個撃破されるのが嫌ならスクラム組む方がいいんでしょうけど、しんどいですよね。思うは一人の仕事で、考えるは皆の仕事ですから、思ってばかりだと何にもならないのは分かるんですけど。
1994年、コマ寮中寮2F麻雀部屋のヘビーローテーション・アルバムは、『ATOMIC HEART』『ORANGE SUNSHINE』を経て、オザケンの『LIFE』に移っていました。夜の9時くらいから打ち始めて、朝の6時くらいまでずっと繰り返し聴いていると嫌でも覚えます。音痴のタツオがひょろ長い声で「うぇでぃうぃごー、うぇでぃうぃごー、へいなーーう」と絞り出す時、誰もそれが「Where do we go,Where do we go,Hey now」だとは分かりませんでした。でもその問いは、確かにその時私に突きつけられていたのです。「さて、私たちはどこに行く?」


ということで今回は、オシッコちびるくらい青春している作品を紹介します。

近代麻雀 2011/2/1号


昨晩やっと購入したのですが、私が見ていた竹書房の公式サイトの情報は2ヶ月前、12/1号のものでした。キンマの感想を書くのは4年ぶりなのですが、4年経っても竹書房のテキトーさは変わっていないようです。
そういえば、誰かヴィクトリー麻雀のサイトのアドレスを覚えていたら教えてください。確か「v-mahjong.jp」だったと思うのですが。あとヤフオクでヴィクトリー麻雀が出品されていたらご連絡ください。


初めてですが、勝手に近麻に麻雀の点数をつけていきます。
 ※お断り…パクリじゃありません、リスペクトです。

  • 表紙

鷲巣さまの歯を塗り分ける必要はあるのでしょうか。久しぶりにマジマジと見つめてみると、変ですね、これ。上の画像は顔認識機能つきの携帯カメラで撮っているのですが、アカギの顔は認識されても鷲巣さまは全く反応してくれませんでした。

  • グラビア「何切る?2011新春キャラクター占い」

ご祝儀で8000点。エル・インコ好きですな。
四萬五萬五萬六萬七萬五筒五筒六筒七筒八筒九筒七索八索 ツモ九萬 (c)izumick supported by 麻雀王国
親リーが入ってるなら現物で。七索 →安斉さんでした。悪くない。

2000点

5800点。どこにでも現れるあの人が微笑ましいです。

5200点エビちゃんが似ています。津田弁護士の著書に書かれている事と内容はほぼ同じです。

賭けマージャンはいくらから捕まるのか?―賭博罪から見えてくる法の考え方と問題点

賭けマージャンはいくらから捕まるのか?―賭博罪から見えてくる法の考え方と問題点

こういう青臭い主張ができなくなったら人間終わりだと思いますので好感を持って受けとめていますが、現実的に動くのはキツイでしょう。
まず警察は警察権を持ってます。作中に書いてあるとおりレートがいくらでもパクれる訳で、これだけでも萎縮するに十分です。加えてこの問題に関する警察の行動には「効果が大きい所を狙う」、つまり見せしめの原則があるように思われます。蛭子さんの件だって、噂によれば伊○院静を狙ったけど、タイミングが合わなかったので彼になったそうですし。真っ先に動いた所からパクられるのでは、猫に鈴つけるのと同じで誰も動きません。
次に麻雀業の組合がまともに機能しておらず、また組織内でも見解が異なります。「うちはセット屋だから、お客さんが何してようと関係ないよ。悪いのはフリーで、あんなのは組合に入れなければいい」と言う人もいれば、「セットにせよフリーにせよ、いくらまでならOKなのか基準を作らせるよう行動すべきだ」という人もいます。「色々言ったって麻雀は博打なんだから、今まで通りやってればいい」という考えもありますし、「ノーレートを推進すべきだ」という主張も尤もです。ただでさえ圧力団体としては無力に近い組織が方向性で対立していては何も進みません。
最後に、これは少しずつ変化しているのでしょうが、高レートで打つことへの憧れは、パクられるスリルと背中合わせだと思うのです。「こないだウーピン*1で打ってさぁ」とか「こないだマンション麻雀に連れてってもらったんだ」とか自慢する人がいますが、もし賭け麻雀が全くパクられなかったら、自慢度はかなり軽減するはずです。ネット麻雀を馬鹿にする人にも通じることでしょう。こういう心性、というか社会通念は、意外と障害になるようです。もちろん、こういう人だけ捕まるといいんですけど。

8000点。今号で唯一続きが楽しみです。積倉の目が今までの片山キャラにはないタイプで、そこも気になります。

  • 鉄火場のシン 画・森遊作+作・荒正義

7700点。諦めの悪さがよく出ていてカッコイイです。荒原作は男だけの世界が似合いますね。

  • バイヅケ 葛西りいち

2600点ど根性ガエルは何か意味があるのですか?

2900点。変わったタイトルなので、新機軸があるのかと思ってました。

読んでないのでコメントできません。

  • 麻雀群狼記 ゴロ 画・嶺岸信明+作・来賀友志

5200点佐々村さんのイケメンぶりにメロメロです。これからも楽しいマンガよろしくお願いします。(福岡県・哮るの会会員4号)

  • 角刈りすずめ KICHIJO

3900点。意味が分からないけど面白いですね。

2600点。本当は七筒ツモッてたってことなんでしょうか。艦砲射撃@花引きのような終わり方。

8000点。中島みゆきが聞こえました。通して読んでまた感想書きます。

  • ガチンコ4すくみコラムバトル

女子高生が今時「麻雀打ちに胸キュン!!」とは冗談でも言わんと思うのですが…「Waiting at Hell」は「〜 in The Hell」が正しいと思うのですが…ジャス子さんの言うとおり、女子高生が麻雀をやればチヤホヤされるとでも思ってるんでしょうかね。見通しが甘すぎますよ。

  • 次号予告

バードが画・山根和俊でリメーク。『GAMBLE FISH』の次だから、大いに期待が持てそう。「地底700mの闘牌」って、いのけんさんが飲み会でのヨタ話から決まったようなネタ、って言ってたやつですかね。

*1:1000点500円のレート

パイガ泣いている

数年前にパイガというサービスを公開して、広く使っていただいたのですが、借りていたサーバーがサービス停止になって、牌画像が表示されなくなってしまいました。最近麻雀王国さんの協力を得て再開したのですが、以前に書いたブログエントリーについては、表示されないままです。
これを解消するにはリンクのアドレスを変えるしか手段がないのですが、いっこいっこ置換するのはメンドクサイので何とかしなければ、と思っていたところ、

enecreさんという方が、非常に便利なツールを公開してくださいました。私がお礼を言うのもおかしな話ですが、ありがとうございます m(_ _)m。


新しいパイガは、こちらから利用できます。

最近では、手牌つく郎という、便利なだけではなく楽しいツールも公開されていますが、ぜひ麻雀王国さんの方もご贔屓に。「雀のお宿」さんの牌画が使えるのはこちらだけです。


ちなみに、「パイガ」でググると、ワキガの親戚のパイガが引っかかるのが悲しいです。

天下に無双 (1986)

作・小島武夫+画・司敬 徳間書店・トクマ・コミックス101



小島武夫、人気です。「最初で最後の自叙伝」と謳った新刊『ろくでなし』も、麻雀関係の書籍としては好調な売れ行きのようです(1/2現在、Amazonの本ランキングで 4,467位)。

ろくでなし 伝説のミスター麻雀、酒と女とカネの無頼75年

ろくでなし 伝説のミスター麻雀、酒と女とカネの無頼75年

ただ、私より少し上の世代の人達のヒーローであって、イマイチ凄さが分からない、というのが正直なところです。麻雀プロの世界で重要な人であるにしては、斯界の発展に貢献したように見えないのですが、それは今回関係ないので措きます。


小島武夫の麻雀マンガ原作の一大特徴は

  • 本当に関わっているのか、あるいはどの程度関わっているのか不明

な点にあります。
多分これは、彼が超人気者であったことと関係しています。マンガ原作は彼にとってメインの仕事ではなかったようで、これは小島名義の戦術本の数や、同業である灘麻太郎のマンガ原作の数と比較すれば明らかです。また自伝や周囲の人間の評から窺える性格から推測すると、どこまで自分でやっているのかは疑問が残ります。
もちろん、出版する側の都合もあるでしょう。「小島武夫」のクレジットが有る無しが売れ行きを左右する、そんな時代だったと聞いています。ごく初期の名作「牌鬼師」(これで「ザ・パイオニア」と呼びます。ファンクです)にも、「配牌・小島武夫」という形で名を連ねていますが、どれくらい関わっていたのかは判然としません。


あらすじ

見返しには

青春という名の四角い卓に夢を賭ける男が一人!男は玄界灘の荒波に意地と情熱を叩きつける!!博多はホロ苦い哀歓を漂わす陽かげりの街だった―熱き闘牌に命を燃やす若者を描く珠玉巨編!!

と書いていますが、かなり嘘です。どちらかと言えば「東京で名を上げた小島武夫が、無名時代のドジな失敗を語る」というのが大筋。上の説明は、他の司敬の麻雀マンガ作品に当てはまる特徴と言えます。「やらずぶったくり」「勝負師遍路」「博多っ子哀歌」「カモと海坊主」「木枯らしの卓」「風と女と背広」「冬の陽炎」「博多別れ打ち」の8つのエピソードが収録されています。


いきなりこう書くと身も蓋もないのですが、この作品、小島武夫原作というより、彼がほうぼうに書いていた昔のエピソードを上手く構成したものじゃないかと思います。その分、ケレン味が少なくて、アッサリした味わいの佳品に仕上がっているようです。
例えば「博多っ子哀歌」のエピソードを紹介しますと、

麻雀の負けが払えなくなり、間近に迫った山笠祭に着るハッピを質に入れて精算する
→もちろんそこで終わるはずもなく、リベンジマッチを挑むが、更に負けてしまう。
→気分を変えようと博多から汽車で2時間くらいかかる小倉まで出向くが、そこでも負け。
→結局実家に寄って兄の背広を借りて、それを代わりの質草にすることでハッピを取り返す
→「これは私小島武夫の若い日のこと 祇園山笠の夏がくる度に思い出すズッコケ裏話なのである」

といった感じです。ハッキリ言って冴えない、どうでもいい昔話ですが、正直で憎めない印象を受けます。他の話も同工異曲で、いけ好かない雀荘のマスターを送り込みのイカサマで型に嵌めるとか、恋人に時計を買うために奮闘していたら、その隙に友人が彼女を寝とってしまったとか、「そうですかぁ」としか感想が言えない話が続きます。唯一物語として盛り上がりそうなのは「勝負師遍路」ですが、麻雀物に典型的なバッドエンドに落ちて凡庸です。

しかし読み進めていくうちに、「小島武夫ってこういう人なんだな」と妙に納得させられる仕組みになっています。これは作画の司敬が、お得意の「青春フォーマット」に落としこんでいるのが要因でしょう。今でこそ倉科遼と名前を変えて水商売フォーマットを量産している司ですが、この時代の司の代名詞といえば「青春」でした。例えば上のエピソードに登場する質屋のおばあさんは「いい若い者が麻雀ばっか打ってからに…でも若い時うちこめるもんがあるのはいいよね…」とか「負けても負けてもコリないんだから…若いんだねエ」とか宣います。おばあさんそれは目が曇っているのでは…。どちらかといえばギスギスした暗いエピソードも、この甘い味付けによって立派な一品として成立しています。


まだ慣れてないのでどう書けばいいのか掴めません。
とりあえず四方田さんの『青春!!雀鬼颯爽』レビューを皆さん読むといいんじゃないでしょうか。